日本酒の醸造法というのは、世界の中でも最も精巧且つ、複雑であるといわれ、一朝一夕で出来る簡単なものではありません。 この伝統を匠の技として受け継いできた人々が杜氏(とうじ)であり、その下の蔵人さん達を指示し動かします。 酒造りの一番のかなめは麹であり、麹を30℃を越す麹室において、一刻(トキ)の休みもなく見続け、蒸米・発酵の泡の具合などを瞬時に判断し、酒の職能軍団を動かす杜氏の腕によって、良質な酒が生まれるのです。

杜氏の多くは農村地帯の出身であり、年の半分は農業、半分は酒造りをする方が多かったようですが、その人数も減少傾向にあり、高齢化が進んでいるそうです。 杜氏は蔵元の職人さんではなく、仕込みの季節になると蔵入りするという一般的にいう契約社員のようなものです。 業界特有の体質により杜氏の持つ技術は杜氏の内輪でしか伝承を禁じていたため、閉鎖的であり、またそれ故に確実受け継がれてきたものです。 最近では、蔵元が杜氏を育てたり、若い女性の杜氏が誕生しており、酒に関わる業界会も時代とともに変わりつつあります。

酒の出来は杜氏によってさまざまに変わります。
県   名 杜  氏  名
青  森 津軽杜氏
岩  手 南部杜氏
秋  田 山内杜氏
新  潟 越後杜氏
長  野 小谷杜氏・諏訪杜氏
福  島 会津杜氏
静  岡 志太杜氏
石  川 能登杜氏
京  都 丹後杜氏
兵  庫 丹後杜氏・城崎杜氏
岡  山 備中杜氏
広  島 広島杜氏
島  根 出雲杜氏
山  口 大津杜氏
高  知 土佐杜氏
福  岡 柳川杜氏・久留米杜氏
長  崎 備前杜氏・生月杜氏
※特に、南部,越後,丹波杜氏は、日本三大杜氏と呼ばれています。